「紅葉狩り」って、無意識に使っていますが、改めて考えてみると
見るだけなのに、なぜ「狩り」?っていうのか不思議ですよね。
でもそこには、ちゃんとした意味や語源の由来がありました。
詳しく解説します。
1.紅葉狩りの意味
まず、「狩り」って、広辞苑で調べて見ると
『広辞苑』
かり【猟・狩】
(1) 鳥獣を追い立てて捕らえること。狩猟。「―をする」
(2) 魚・貝をとること。すなどり。「潮干狩り」
(3) 薬草・松茸・蛍・桜花・紅葉などを尋ね探し、採集または観賞すること。
(1)で鳥獣を追い立てて捕らえること、いわゆる我々が日頃思っている
狩猟のことが書いてあります。
でも、
(3)に紅葉などを尋ね探し、採集または鑑賞っていう意味があります。
狩りでも、鑑賞っていう意味がありました。
以上、説明終わり。
・・・では、ありません。
紅葉などを尋ね探し、「採集」 とありますね。
「採集」?実際に狩りしていたのでは??
紅葉狩りの歴史や由来を見てみましょう。
2.紅葉狩りの由来
「狩り」は、元々は
野山に分け入って猪や鹿、山鳥などの鳥獣を狩猟する意味です。
それが徐々に、
鳥獣より小さい野鳥や小動物を捕まえるのにも、「狩り」が使われる
ようになりました。
これは納得ですね。
さらに時が経つと、
果物などの植物を採取する意味にも使われる
ようになりました。
これは現在でも使われている
「いちご狩り」
「ぶどう狩り」
「きのこ狩り」などの語源です。
も、植物の収穫全部を「狩り」と言ったわけではなく、
山菜などは「摘む」
栗は「拾う」
タケノコや芋は「掘る」
等々とことばを使い分けています。
果物やキノコは、「狩り」ですが、
これはなぜかというと、
少し手に力を加えて
本体から「もぎ取る」動作を「狩る」と表現
したわけです。
奈良時代あたりまでは、
山のなかに入って
紅葉の枝をもぎ取って(狩り)きて
部屋に飾ったり、
思いを寄せる人に贈ったりする
風習が実際にあったのです。
で、「紅葉狩り」と言ったわけです。
平安時代以降は、
自宅の庭や寺院の敷地内に楓(カエデ)などを植えて、
楓などが紅葉したのをそのまま鑑賞することが多くなり、
わざわざ山に入って紅葉した枝を折って持ち帰るという
風習は廃れていきました。
でも「紅葉狩り」という言葉だけは残りました。
これが、紅葉狩りの語源の由来です。
「紅葉狩り」は万葉集にも出てくるくらい、
古くから使われている言葉です。
余談ですが、紅葉(もみじ)と楓(かえで)って、違いがわかりますか?
これも気になるところですが、別記事にまとめましたので、参考にしてください。
3.紅葉狩り伝説
「紅葉狩り」の語源ですが、こんな説もあります。
昔、戸隠山に紅葉と呼ばれる鬼女がいたそうで、
その鬼女を退治(狩る)する話から、「紅葉狩り」となった
という話です。
この話のあらすじは、こうです。
『戸隠山に「紅葉」という鬼女が住んでいました。
山を降りては村の人々を餌食にするため、
時の帝が平維茂(たいらのこれもち)に鬼退治を命じます。
維茂が戸隠山に向かうと、美しい女たちが紅葉の下で宴を催していました。
維茂は女に誘われるがまま酒宴に加わり、いつしか深い眠りに落ちてしまいます。
この女たちこそ鬼女紅葉とその手下。
罠にはまった維茂を前に、鬼女が本性を現したそのとき、
維茂の夢の中に神が現れ、お告げと神剣を与えます。
危機一髪のところで目を覚ました維茂が
神剣によって鬼女を退治し、戸隠山に平穏な日々が戻りました。』
この話を元に、「鬼揃紅葉狩」という歌舞伎の演目もあります。
「鬼女紅葉伝説」の紅葉さんですが、
実は頭の良い才女で、不思議な能力をもち、
本当はとても良い人だったという話があります。
人々の目の前で病気を治しの奇跡に驚いた人達が、
不思議な力を持つ彼女を化け物扱いして、
彼女を村から追い出してしまった。
と言う話が転じて鬼女伝説となったという説もあります。
まとめ
紅葉狩りの狩りの語源は、
古代は紅葉した枝を実際に狩っていた(採集)ことの
名残りで紅葉狩りになっていると思われます。
その証拠に、
植物を刈る、「イチゴ狩り」「ブドウ狩り」などのことばも残っています。
花見は、花を狩らずに見ていたので、花見という言葉になっていると思います。
(ただ古代には、「桜狩り」という言葉があったようで、桜の枝を折って
狩っていた可能性はあります。)