日本の高齢化が加速しています。
2017年現在、65歳以上の高齢者は、4人に1人以上になり、
2060年の予測では、何と2.5人に1人は高齢者になる見込みです。
高齢になると心配なのは、ぼけること、いわゆる「認知症」。
今自分はぼけてないから、「認知症なんて大丈夫」と思っているかもしれませんが、
これは、確実に予防する方法はわかってないので、何とも言えません。
でも、認知症になる危険因子でわかっているものは、一つでもつぶしておきたいです。
☆認知症と歯周病
アルツハイマー型認知症で亡くなったヒトの脳を調べると、
歯周病で主になるジンジバリス菌が高頻度で検出されるそうです。
アルツハイマーでなかったヒトの脳からは、全く検出されませんでした。
マウスの実験
人工的にアルツハイマー型認知症にしたマウスを2群にわけ、
一方に歯周病菌を感染させたところ、
両群とも、脳にアルツハイマーの原因とみられている
アミロイドβというタンパク質が増えていたのですが、
歯周病マウスの方が、アミロイドβの量が1.5倍多かったとのことです。
つまり、歯周病の治療をしっかり行えば、認知症になっても進行を抑えられる可能性が
あると考えられます。
☆認知症を予防するための歯周病のコントロールはどうするか?
アルツハイマーの原因物質のアミロイドβの蓄積は、
実は発病の10から15年前から始まっています。
アルツハイマーが発病するのは、70代が多いので
遅くても50代には歯周病のコントロールが必要と思いますが、
若年性のアルツハイマーもありますし、
歯周病は、若い世代でもあるので、
歯周病のコントロールは、早く始めるに越したことはないです。
歯周病のコントロールについては、次の記事を参考にしてください。
→→→歯周病を治すために!正しい治療方法とそれができる歯医者の選び方
☆歯周病が認知症に影響していると疑っている実例
私達の診療所に、歯周病が認知症に影響しているのではないかと思われる
患者さんが受診しています。
この方は、77歳の男性。
何十年も前から歯周病を指摘されていたのだけれど、
特に困る症状もなかったので、歯科治療は受けずにきていました。
そうしたところ2年くらい前から、
右奥歯の上下の歯茎が腫れて、食事を噛むと痛むので、
ずっと左側で噛んでいました。
歯周病が進行したのでした。
でも、歯医者に行くと歯を抜かれると思い、歯科治療は受けませんでした。
それとともに、物忘れがひどくなってきて、
今日あったことも思い出せないくらいになっていました。
後日、この方は認知症で家族も手に負えなくなり、入院しました。
私達の自然療法で、この方の歯茎の腫れと痛みは軽減して、
右側でも噛めるようになったのですが、歯周病自体を治せたわけではないです。
この方は、歯周病で長年歯科治療を拒否してきたために、
長年、口の中には大量に歯周病菌が蔓延していたでしょうね。
何十年も前から歯周病菌が脳に回って、アミロイドβの蓄積を促進されて、
認知症を発症したのではないかなと疑っています。
歯周病と指摘された時点で、しっかりと歯周病の治療を始めておけば、
歯周病の進行も抑えられたでしょうし、
認知症も発症しなかったのではないでしょうか。
◎まとめ
歯周病は、初期には日常困るほどの症状がないので、放置しがちです。
しかし、歯周病菌と認知症の関係が指摘されてきているので、
認知症の発症予防にも、早期に歯周病の治療を始めた方がいいと思います。
歯周病自体も、痛みや腫れなどの困るほどの症状がでてきたときには、すでにかなり進行しているケースが多いです。
進行して抜歯が必要になり、歯も少なくなって食事が良く噛めなくなると、
そのことでも、認知症が進む可能性があります。
認知症の予防、歯を失わないために、歯周病は早期発見、早期治療を是非オススメします。