「深呼吸ってからだにいい」って何の疑いもなく思っていますよね。
私も、長年そう思っていました。
でも最近、呼吸の正しいしくみを知って、深呼吸してもからだのすみずみに酸素がいきわたるわけではないことを知り、愕然としました。
逆に、深呼吸がからだのためにかえって良くないことがあるということがわかり、正しい呼吸に心がけるようにしています。
深呼吸がからだにいいと思っていたあなたにも、正しい呼吸のしくみとその方法を知ると、健康で疲れにくいからだになれます。今回、正しい呼吸のしくみと方法を解説します。
1.呼吸のホントのしくみ
呼吸って、空気中の酸素を取り入れて、
からだの中で発生した二酸化炭素を吐き出す。
まずこれは小学生レベルでわかりますよね。
取り入れた酸素を運ぶのは、血液中の赤血球。
赤血球のなかのヘモグロビンと酸素が結合して、
からだの隅々まで酸素が運ばれます。
今までの思い込みだと、
深呼吸をして酸素をいっぱい取り入れた方が、
赤血球とくっつく酸素が増えて、
からだの隅々にも酸素がよく行き渡ると思ってました。
私もときどき、深呼吸をして、
できるだけお腹をへこまして肺の空気を吐き出し、
今度はお腹をふくらませつつ、できるだけ肺いっぱいに空気を吸い込んでました。
ところがです・・・
赤血球中の酸素は、ヘモグロビンから離れないと
からだの筋肉や臓器や組織には入っていけないのです。
血中酸素が十分にあっても、酸素の切り離しができないと
からだの組織に酸素が回りません。
そこで、ヘモグロビンから酸素を切り離すために大切なのが、
実は、二酸化炭素!
二酸化炭素って、呼吸で吐き出すので必要ないかと思っていましたが、
実は、赤血球からのからだの組織への酸素の受け渡しには必要なんです。
どういうことでしょう。
ここで突然ですが、炭酸水の話。
コーラやサイダーやビールやシャンパン。
あのシュワシュワっとした炭酸。
炭酸水をどうやって作るかって言うと、
二酸化炭素を水に混ぜると、
二酸化炭素が水に溶け込んで、シュワシュワっとした炭酸水になります。
二酸化炭素は水に溶けやすい性質があります。
また、二酸化炭素が溶けた水は酸性になります。
そこで、からだの新陳代謝で発生した二酸化炭素の話になります。
これがどうやって肺に戻ってくるかというと、
水に二酸化炭素が溶け込むように、
血液に二酸化炭素が溶け込んで肺に戻ってきます。
二酸化炭素が水に溶けやすい性質とともに
水に溶けると、水を酸性にする性質があります。
血液も二酸化炭素が溶け込むと、酸性に傾きます。
実は、血液が酸性に傾いてくると、
ヘモグロビンと酸素の結合力が弱くなって、
酸素が赤血球から離れやすくなり、
からだの組織に入りやすくなります。
これを発見したデンマークの学者の名前にちなんで、
「ボーア効果」と呼ばれています。
ちょっと難しいですが、
呼吸で取り込んだ酸素をからだ中に送るには
二酸化炭素がカギだったんです。
私はこれを知ったとき愕然としました。
酸素をいっぱい吸い込み
二酸化炭素はできるだけ吐き出すのがいい呼吸だと思っていたからです。
深呼吸で酸素をいっぱい取り込んだとしても、
酸素の受け渡しに必要な二酸化炭素を吐き出してしまうと、
酸素の受け渡しができずに、組織に酸素が回らない
ということになってしまいます。
覚えているかもしれませんが、
NHKの紅白歌合戦で、欅坂46のメンバーが過呼吸で倒れましたよね。
激しいダンスで、呼吸がとても大きくなっていて、
酸素もいっぱい吸っていたんでしょうが、必要な二酸化炭素を吐き出していたために、
酸素が組織に回らずに倒れてしまったんですね。
2.正しい呼吸法とは
呼吸の正しい仕組み。
繰り返すと、
酸素をからだの組織に送るには二酸化炭素が重要だということです。
運動の時は、使っている筋肉などからどんどん二酸化炭素ができるので、
効率よく酸素がヘモグロビンから離れて、筋肉組織などに運ばれます。
問題は安静時です。
運動時と違って、二酸化炭素が大量に発生するわけではないので、
酸素受け渡しに必要な二酸化炭素を肺にためておかないといけません。
深呼吸で肺の中の二酸化炭素を吐ききってしまうと、
酸素の受け渡しができなくなって、
動悸やめまい、息苦しさのような症状がでたり、
健康のためと思ってやった深呼吸が逆効果になってしまいます。
そこで、正しい呼吸法です。
ポイントは3つです。
(1)鼻で呼吸する
鼻って、鼻毛が生えていたり、中の方には鼻粘膜があったりして、
空気のフィルターの役割をしています。
空気中のごみ・細菌・ウィルスを除去したり、
空気を適正な温度にしたり、湿度を与えます。
口呼吸だと、汚れた空気がのどを直撃するので、
のどを痛め、感染症などにもかかりやすくなります。
また、口呼吸は必要な二酸化炭素も排出しやすくなります。
なので、正しい呼吸の第一の基本は鼻呼吸を徹底することです。
(2)横隔膜を使って呼吸する
酸素の受け渡しに必要な二酸化炭素を肺にためこむには、
肺を大きく使うことが効率的です。
肺を大きく使うとは
肺を大きく動かすことです。
肺を大きく動かすためには、
胸式呼吸より腹式呼吸が適しています。
腹式呼吸をするためには横隔膜をよく動かすことです。
横隔膜をよく動かすためには、お腹をふくらませたり、縮めたり、
お腹の動きを使います。
(3)ゆっくりと呼吸する
速い呼吸は、肺を大きく使えず、
二酸化炭素を十分に肺にためることができません。
また、呼吸が速いと必要な二酸化炭素を吐き出してしまいます。
なので、ゆっくりと横隔膜を動かして、静かに呼吸するのがいいです。
たくさん空気を吸い込まなくても、普通は血中の酸素は足りているので、
自然なお腹の動きで横隔膜を動かして、ゆっくり静かに呼吸するのがいいです。
◎まとめ
からだの組織に酸素を効率的に送るには、
二酸化炭素が大事だと知って、
呼吸に対する考えが180度変わりました。
姿勢を正して、
鼻を使って、
腹式呼吸で
ゆったり静かに呼吸するのが正しい呼吸方法です。
たまにおいしい空気を深呼吸でたっぷり味わうのもいいですが、
日頃からだの細胞に効果的に酸素を送るためには、
深呼吸で大きく空気を吸ったり、吐き出したりする必要はないことがわかりました。